電子帳簿等保存制度の改正による個人事業主への影響

 令和3年度の税制改正で電子帳簿保存法が改正されたことで、令和4年1月1日より、生産性の向上、記帳水準の向上を目的として電磁的記録による保存方法について少なからず影響が生じるものと考えています。
 個人事業主の方で、電子メールやインターネットも利用しておらず、電話と紙しかないという場合は、今回の改正対象とはならないのかもしれませんが、パソコンやタブレット、スマートフォンを利用している方であれば、影響があるものと判断しています。

改正概要について

本改正の詳細な説明はここでは割愛しますが、主な改正概要は以下の通りです。

  • 電子帳簿等保存、スキャナ保存に関して税務署長の事前承認制度を不要に変更
  • 電子帳簿の保存要件を”優良”と”それ以外”に区分して要件緩和
  • スキャナ保存要件の見直し(タイムスタンプ要件、検索要件の緩和と適正事務処理要件の廃止)
  • 電子取引の保存要件の見直し(要件緩和と義務化)

積極的に受領した書類等を電子化しない場合でも、電子データとして受領したもの(電子取引)は今回の改正の影響を受けますので、次にその場合の留意点をまとめています。

なお、詳細は国税庁HP:令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについてをご確認ください。7月上旬に更新されて、本日現在、電子帳簿保存法取扱通達や電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)、電子帳簿保存法Q&A(一問一答)等が公開されています。

個人事業主にとって必要な対応は?

今回は、個人事業主、特にIT利用を最低限で利用している方にとっても留意しないといけないことをIT専門家としての立場から、Q&Aを参考に以下に挙げてみました。

問12:妻と2人で事業を営んでいる個人事業主です。取引の相手方から電子メールにPDFの請求書が添付されて送付されてきました。一般的なパソコンを使用しており、プリンタも持っていますが、特別な請求書等保存ソフトは使用していません。どのように保存しておけばよいですか。

答:例えば、以下のような方法で保存すれば要件を満たしていることとなります。
1 請求書データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示する。
例) 2022年(令和4年)10月31日に株式会社国税商事から受領した110,000円の請求書 ⇒「20221031_㈱国税商事_110,000」
2 「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する。
【問24】に記載の規程を作成し備え付ける。
※ 判定期間に係る基準期間(通常は2年前です。)の売上高が1,000万円以下であり、上記のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、上記1の設定は不要です。

恐らく、電子帳簿等保存法はあまり関係ないと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、ネット通販を利用して、物品購入すると、最近はHPから領収書を取得する場合もあります。
この場合、従来のようにプリントアウトした紙を原本として保存することは認められません(消費税法ではまだ認められていますが。)。
【留意点】
①電子データについても、バックアップが必要です。できれば、クラウドのファイルサーバに保存とかしていると安心です。
②自計化で自身で記帳をしている場合、消費税の納税義務がある方は、検索機能の確保の要件を満たすような、工夫(上記参照)が必要です。

問38 :自社で使用する電子取引用のソフト等について、電子帳簿保存法の要件を満たしているか分からないのですが、どのようにしたらよいですか。

答:まずは当該ソフトウェアの取扱説明書等で電子帳簿保存法の要件を満たしているか確認してください。また、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(以下「JIIMA」といいます。)において、市販のソフトウェア及びソフトウェアサービス(以下「ソフトウェア等」といいます。)を対象に、電子帳簿保存法における要件適合性の確認(認証)を行っており、JIIMAが確認(認証)したソフトウェア等については、そちらでも確認することができます。

自社利用する電子取引用のソフト(ASPサービス)があれば、電子帳簿等保存法の要件を満たしているかを、確かめたうえで利用する必要があります。
要件を満たしていないと電子帳簿保存法違反となる可能性があります。

留意点】
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(略称JIIMA)が法的要件を満たしているか確認しています。
JIIMAのHPより、ご利用の電子取引用のソフト(ASPサービス)が法的要件を満たしているか確認した上で、追加の対応を検討します。

積極的にデジタル化を考えていなくても、個人事業主であってもITを利活用、ITへのリスクに対応していかないといけない時代となりつつあるなという事で、先ずは上記については、年内にご確認頂くことが肝要です。