ストックオプションについて
上場準備会社では、優秀な人材確保や従業員等のインセンティブのためにストックオプション(Stock option:以下、SOと表記)を利用されていることが多く、上場しようと検討中の企業が増えている状況から判断して、今後は更に増えてくるものと思います。
ここで、SOには税制適格と非適格が存在しており、税制適格SOの従業員メリット*¹を享受しようとすると、税制適格となるようにその要件を満たしておく必要がありますので、今回は税制適格SOとして発行するための要件について解説します。
*¹税制適格SOの従業員メリット:①課税のタイミングを売却時にできる(権利行使時点では課税されない)、②分離課税として、20%の課税となる(非適格の場合には、給与所得や退職所得、雑所得になることがあり、累進課税のため、5~45%)
税制適格SOの要件
税制適格SOの適用要件は措置法29条の2に定められており、かいつまんで記載すると以下になります。
- イ.発行価格
発行価格は無償での発行に限定されています。金銭の払込みだけでなく、金銭以外の資産の給付、役務提供の対価としたSOの発行も対象外となります。
- ロ.付与対象者
付与対象者としては、会社及びその子会社の取締役及び執行役、使用人であること(措置法29条の2第1項)とされています。
但し、大口株主(自社株の1/3以上の株式保有者とその親族や配偶者)は対象外になります。
ちなみに、現在、ストックオプションを活用した柔軟なインセンティブ付与を実現することで、スタートアップが社外の高度人材を機動的に獲得し、成長することを後押しすることを目的として、事業計画策定の上で社外高度人材にまで拡大しています。
S/D:社外高度人材に対するストックオプション税制の適用拡大
- ハ.権利行使期間
権利行使期間はストックオプションの付与決議後2年経過後から10年を経過する日までになります。
上場会社だとこの期間に公正価値を算定の上、2年間で費用処理するという会計処理もありよく見受けられますが、非上場会社の場合には時価=行使価値として、会計処理なしとなります。
~令和5年度税制改正における権利行使期間の拡大について~ スタートアップへの支援を図る目的で、設立の日以後5年未満の株式会社であって上場した株式発行会社以外の会社等の要件を満たす会社に限って10年から15年に拡充することになりそうです。 |
- 二.権利行使価格
SOの権利行使価額はSO発行時の株価以上で設定する必要があります。なお、非上場会社の場合の株価は税制に従って算出する必要があります。(次回記事にて説明)
- ホ.譲渡禁止規定
税制適格SOは譲渡が禁止されることも要件になります。他人への譲渡ができる税制非適格SOと異なります。
- へ.権利行使限度額
年間の行使価額が合計1,200万円以下とする必要があります。年間1,200万円を超過した場合には、この年は税制適格ストックオプションの適用外となってしまいますので、非適格SOと同じ課税扱い(権利行使時に課税)になります。
- ト.その他要件
権利行使した際に取得した株式の保管先となる証券会社を定めておくために、証券会社と契約が必要であったり、SO税制適格ストックオプションにかかる法定調書である『特定新株予約権等の付与に関する調書』を提出する必要があったりします。
参考:国税庁HP[手続名]特定新株予約権の付与に関する調書(同合計表)
以上の様に税制適格SOを発行し従業員等に付与するには、いくつかの要件が定められているため、その要否や実現可能性等を入念に検討した上で実行することが必要になります。特に、税制適格SOの適用外となってしまうと、付与者にとっては、資金がない中で課税されるといったメリットがなくなってしまう恐れもあります。
最後に
役員や従業員等にストックオプションを付与することで士気を高め、業績を伸ばす事が出来たという事例もございます。
うみもと公認会計士事務所では”我が社でも検討してみたい”という経営者様をご支援しておりますので、お気軽にお問い合わせください。